ひろしまアニメーションシーズン2022

PROGRAMプログラム

特別プログラム

特集上映&ライブ「ボカロ特集:身体の未分化」

スケジュール

8月21日(金) 19:30~ @JMSアステールプラザ中ホール

プログラム概要

2000年代初頭に登場したボーカロイド文化は、インターネット上の創作コミュニティとともに発展し、音楽、映像、イラスト、キャラクター文化を横断する独自の表現圏を形成してきました。近年では、ボーカロイドが人間の歌声に近づく一方で、人間の歌唱もまたボーカロイド的な表現へと接近し、生身とデジタルの境界を横断する新たな表現領域が生まれています。

この状況のなかで浮かび上がるのが、「身体の未分化」ともいえる感覚です。ボーカロイドのミュージックビデオでは、キャラクターの身体がデジタルノイズやグリッチを帯びたまま、血を流したり傷を癒したり…。そこでは、生身とデジタル、実体と記号、生命とデータといった境界がゆらぎ、いわば「半なま」の身体性が立ち現れています。

さらに、その感覚は作品の内容だけでなく、創作のあり方そのものにも及んでいます。ボーカロイド文化では、オリジナルとコピー、作り手と受け手、ジャンルや制作手法といった区分にとらわれず、二次創作やリミックスが活発に行われています。手描きアニメーション、うごくメモ帳、3DCG、実写、プログラミングなど、多様な技法が隔たりなく用いられ、社会批評から個人的な思想の表明まで、多様な価値観が共存しています。また、その創作は国籍や地域を問わず広がり、それぞれが独自の興味やアイデアに突き動かされながら新たな表現を生み出しています。

本プログラムでは、椎乃味醂をはじめとする、現在進行形で更新され続けるボカロMVを特集します。また、椎乃味醂が主宰するStudioGnuの実践にも触れながら、「身体の未分化」という視点から、現代ボーカロイド文化の現在地を探ります。

キュレーター:宮﨑しずか
協力:椎乃味醂、木葉はづく、Bivi、柚璃遥、アボガド6

ゲスト

パフォーマンス:椎乃味醂

higma「echo」
higma(作曲)/Bivi(MV監督)/木葉はづく(モニター内映像監督)
日本
2024
6分17秒

楽曲の制作からアップロードまでのプロセスの一部始終を、ライブ感をもって鮮烈にまとめた作品。インターネットを介して音楽が生まれてから世界へ放たれるまでの瞬間を、初音ミクを用いたドキュメンタリー的なライブパフォーマンスとして表現している。

作曲|higma

ボカロP・トラックメーカー。
2019年より活動を開始。エレクトロやロックを横断するサウンドと、叙情的な楽曲制作を得意とする。
自主制作作品を精力的に発表するほか、Sou、莉犬、9Lanaなどへの楽曲提供を手がける作家としても活動。
MVやアートワークも自身で制作し、音楽にとどまらない多彩な表現活動を展開している。

MV監督|Bivi

2001年生まれ。東京都出身。
12歳からYouTube上での動画投稿を開始し、現在は主にミュージックビデオの制作をしている。
映像制作ユニット “擬態するメタ” 所属

モニター内映像|木葉はづく

実験映像と商業/インディーズシーンの中間でミュージックビデオを主軸に制作中。Webからアニメーションまでを包括するクリエイティブコレクティブ「Ideoaves」主宰。

椎乃味醂「1ピース」
椎乃味醂
日本
2025
3分00秒

大量の情報をピザの円盤に象徴させ、その増幅と反復に対する暗澹とした「1ピース」としてのあり様を歌う。多重レイヤー化された初音ミクの歌声に合わせ、溶けて伸びる顔面と飛び散るノイズが、ハイテンポに刻まれていく。

椎乃味醂

音楽家・ボーカロイドクリエイター。クリエイターやユーザーとの共創を通じ、独自の創作論やスペキュラティブな作品の構築を試みる傍ら、メジャーシーンへの楽曲提供も多数手掛ける。


『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』© SEGA/© CP/© CFM
Giga(Vivid BAD SQUAD × 初音ミク)「ULTRA C」
イクミ
日本
2024
3分01秒

洗練されたモーショングラフィックスや文字PVで強烈なインパクトを与える2DMV。ビートにシンクロするキレのあるタイポグラフィと画面構成を通じ、イラスト表現の枠に囚われないデジタル映像の可能性を更新した作品。
プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」への書き下ろし楽曲。

作曲|Giga(Vivid BAD SQUAD)

2010年より作曲活動をスタート。「おこちゃま戦争」「ヒビカセ」から「劣等上等」「Beyond the way」に至るまで、ボーカロイドシーンに数々の代表曲を残す。近年はAdo「踊」「唱」や宝鐘マリン&こぼ・かなえる「III」など、ボーカロイドを越えて多彩なアーティストへも楽曲を提供。独自のサウンドでシーンを切り拓いている。

MV監督|イクミ

映像作家。

すこっぷ「ケッペキショウ」
すこっぷ(作曲)/アボガド6(MV監督)
日本
2013
3分41秒

アボガド6制作によるオリジナルMV。2013〜2014年当時にあったコラージュ表現や独自の歌詞演出はその時代特有の表現が今となっては、ノスタルジックでエッジの効いた世界観となっている。

作曲|すこっぷ

2008年12月04日にボカロPとしての活動をスタート。 人の儚く壊れそうだが強い感情を歌った楽曲を得意とし、 「アイロニ」「クライヤ」「ケッペキショウ」など、たくさんの支持を得ている名曲を生み出してきた。ボカロ曲のみならず楽曲提供も近年積極的に行っている。

MV監督|アボガド6

アボガド6はネットを中心にイラスト/マンガ/映像など様々な分野で活動するクリエイター。 SNS上での創作活動が大きな話題を呼び、Twitterフォロワー240万人を超える支持を集めている。その影響力は国内に留まらず、欧米やアジア圏のファンからも熱い注目を受けている。 アボガド6はこれまでマンガ単行本、画集を発表してきており、国内累計発行部数は30万部を突破し、海外版も出版している。また、NHK「みんなのうた」のアニメーションを担当するなど、映像分野でも活躍している。

じん「日本橋高架下R計画」
じん(作曲)/細金卓矢(MV監督)/IA(アーティスト)
日本
2013
1分30秒

IAの透明感ある歌声とここちよいメロディーに乗せ、丁寧なアニメーションで描かれる作品。カットごとに水やスイカが飛び散り、それらが分裂・身分化していく様子をメタファーとして散りばめることで、サウンドの穏やかさとは対比的な、内面の変化や世界の揺らぎを暗示した表現が光る。

作曲|じん

作曲家/作詞家/小説家/脚本家
2011年からニコニコ動画にて、マルチメディアコンテンツ「カゲロウプロジェクト」を始動。
巧みなメロディセンスに、世界観・ストーリーを盛り込んだノスタルジーな歌詞感が多くの反響を呼び、主に若年層から絶大な支持を得ている。
音楽活動の他、漫画原作やアニメの脚本を手がけるなど、アーティスト・クリエイターとして型にはまらないマルチな活動を行う。
近年では、「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」の3周年アニバーサリーソング「NEO」や、バーチャルライバーグループ「にじさんじ」のフェスイメージソング「Hurrah!!」を発表。VTuberや歌い手など次世代の様々なアーティストに楽曲提供を行っており、活動の場を広げている。

MV監督|細金卓矢

ディレクター/プランナー。クリエイティブハウスmimoid設立メンバー。
代表作に、国内外で高く評価された『Vanishing Point』や、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞を受賞した『四畳半神話大系』のエンディング映像などがある。
モーショングラフィックス、実写、アニメーション、ストップモーションなど、作品ごとのコンセプトに最適な手法を用いて制作を行ってる。 そのアプローチは、NHK『デザインあneo』アーキテクチュアシリーズや、特務機関NERVの防災啓発動画、MoN Takanawa開館記念特別公演『MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥』などにも見られ、公共性と広告のバランスに優れた作品づくりに定評がある。

アーティスト|IA

“魂を持つバーチャルアーティスト”として2012年より音楽活動をスタート。その歌声はすべて音声合成ソフトウェアから生み出され、ボイスソースにはアニソン界を代表するシンガー・Liaを起用。 世界12都市を巡るワールドツアーでは延べ3万人を動員。さらに世界300都市で開催したライブ上映会には約10万人が来場するなど、グローバルに活動を展開する。2018年には、音楽・アート・テクノロジーを融合した新感覚のライブエンタテインメントショー「ARIA」を発表。フランス・アンギャン=レ=バン市のデジタルアートフェスティバルでのプレミア公演を皮切りに、アメリカ、日本での公演を成功へと導いた。同年に発表した楽曲「Conqueror」は関連動画の総再生数2,000万回を超え、世界中で親しまれている。 2021年にはEP「pray for real」がiTunes J-POPチャートでオーストラリア、ベルギーで1位、アメリカ、カナダで2位を記録。2022年にはデビュー10周年を迎え、初のベストアルバム、記念書籍の刊行、アート展、カウントダウンライブなど、1年を通じたアニバーサリープロジェクトを実施した。さらに、2023年にIA GLOWB名義でリリースした「INTERGALACTIA」のミュージックビデオは、世界各国の9つの国際映画祭にノミネートされ、そのうち7つの映画祭で受賞するなど、映像表現においても国際的な評価を獲得している。 現在も世界中のクリエイターやファンとの共創を通じて新たな表現に挑戦しながら、「生命・愛・平和」というフィロソフィーのもと、音楽・アート・テクノロジーが織りなす新たなエンタテインメントを通じて、世界へメッセージを届け続けています。

アメリカ民謡研究会「1 アパートの話。」
アメリカ民謡研究会
日本
2018
1分36秒

合成音声ポエトリーリーディングの第一人者で、実験的アプローチを続けるアメリカ民謡研究会によるコンセプチュアルな楽曲。ポリゴンで構築された「一部屋」という独自のソリッドな空間を舞台に、言葉と音楽を鋭く尖らせたオルタナティブな世界観を展開している。

アメリカ民謡研究会

私達の名前は、アメリカ民謡研究会。

シャノン『シンカンセンスゴイカタイアイス』
シャノン
日本
2024
3分44秒

東海道新幹線60周年を記念したファンメイドムービーでありミク、GUMI、歌愛ユキを起用し、確かな学術的知識に裏付けられたアプローチで制作する。高度なクリエイティブを融合させており、魅了される熱いファンも多い。

シャノン

2017年から作詞作曲編曲、イラスト、アニメーションを自身で手掛けるマルチクリエイタースタイルでボカロ活動開始。
「死別」をはじめ、「ヨミクダリの灯」「ひとりぼっち産業革命」など、国内のみならず世界中のリスナーを魅了している。物語性の高い世界観と映像表現に加え、音楽や映像の枠にとどまらない多彩なクリエイティブワークを展開し、ボカロシーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。

Jamie Paige (w/ OK Glass)「BIRDBRAIN」
Jamie Paige(作曲)/Sinead Treacy(アニメーション)/rice(MV監督)
2025
4分16秒

海外ボカロシーンで主流を占める重音テトを起用した作品。独自のアイデンティティを持つキャラクター性と海外の音楽性が融合し、国内のボカロ文化とはまた異なる進化の系譜を鮮烈に示している。

Compose|Jamie Paige (w/ OK Glass)

i love making sounds.

Animation|Sinead Treacy

Hello! I'm Sinead Treacy, a 2D Animator based in Kilkenny, Ireland. I have a deep love and passion for all things animation, film, and games. I have an ever growing enthusiasm for animation, always eager to embrace fresh challenges and learning opportunities, and I thrive on collaboration and working in a team.

MV|ricedeity

american creator with a focus on Vocaloid-related works. other hobbies include drawing, animating, video editing, writing, translating, and updating website 50000 times.

あばらや「れ!」
あばらや、月咲
日本
2026
3分10秒

生まれた頃から当たり前に初音ミクが存在していたあばらやによる、インターネット美学やミームを過度に神聖視しないフラットな作品。それらを当たり前の日常としてニュートラルに乗りこなす、次世代ならではの衒いのない音楽性と映像表現が光る。

作曲・MV監督|あばらや

2022年6月に15歳でボカロPとしてオリジナル楽曲の投稿を開始。
作詞・作曲・編曲だけではなく映像やアートワークも自ら手掛けており、アナログホラーやドリームコアといった、海外発祥のアンダーグラウンド要素を取り入れた作風で注目を集めている。
2024年9月に発表した「かなしばりに遭ったら」はその特異な作品性が話題を呼び、YouTubeに投稿されたミュージックビデオは100万再生を突破。
また、2025年2月に発表した「花弁、それにまつわる音声」は、『ボカコレ2025冬』TOP100ランキングにて1位を獲得。
2026年4月には、自身初となるフルアルバムとして「夢回線」を発表した。

MV監督|月咲

2020年4月、YouTubeに自主制作MVを投稿し活動を開始。
ミュージックビデオやライブ映像の制作を中心に、ポスター、CDジャケットなどのグラフィックデザインも手掛ける。
楽曲の持つ空気感や物語を汲み取り、緻密なリリックモーション、印象的な画面構成、時には3DCGも交えた映像表現によって、作品に唯一無二の世界観を与える。

d.j.ァネイロ「言葉遊び」
melonade、urabenota
日本
2025
2分23秒

歌詞が縦読み、回文等の言葉遊びで成立している、極めて実験的で精緻な怪作。言語的な制約を逆手に取った構築美と、音楽としての高い完成度を両立させており、ボカロ文化における「言葉(リリック)の可能性」を限界まで突き詰めている。

作曲|d.j.ァネイロ

コンポーザー、ボカロp、DJ

MV監督|melonade

映像作家。プログラミングを活用した映像制作で、ミュージックビデオを中心に手掛ける。

MV監督|urabenota

映像作家。アニメ調の3DCGを得意とし、主にミュージックビデオを手掛けている。

お柴鉱脈「アンリアル・エンジン」
お柴鉱脈
日本
2023
2分10秒

Stable Diffusion(画像生成AI)を使用し、2023年当時において革新的な作品。実験的かつ新たな鑑賞体験を提示するとともに、デジタル技術の進化がもたらす音楽表現の最前線を見事に提示している。

お柴鉱脈

コンポーザー / ボカロP

椎乃味醂「まだ知らない君がいる!」
椎乃味醂
日本
2025
3分00秒

少女のパーツを切り抜いて捜索するような映像手法で、個人の迷いや社会の形に対するイラ立ちに迫る。何度も描き直される少女の制作過程をシークエンスに入れ込み、完成形の不在、そしてその捜索あるいは創作への焦燥を印象づけている。

椎乃味醂「ハーモニー」
椎乃味醂
日本
2026
3分00秒

あらゆる表現を受け入れてきた初音ミクの受容性をテーマに、多彩なクリエイティブを調和させた作品。後半にかけて3DCG、手描き、うごメモなど様々な手法でミクの疾走が描かれ、コマ送りで見たくなるほど緻密でコミカルなシークエンスが、ボカロ文化の持つ表現の多様性を鮮烈に物語っている。

椎乃味醂

音楽家・ボーカロイドクリエイター。クリエイターやユーザーとの共創を通じ、独自の創作論やスペキュラティブな作品の構築を試みる傍ら、メジャーシーンへの楽曲提供も多数手掛ける。