ひろしまアニメーションシーズン2022

PROGRAMプログラム

HASプレゼンツ

コンテンポラリー・クラシックス(世界)

スケジュール

8月22日(土) 12:15~ @JMSアステールプラザ中ホール

プログラム概要

今回、映画祭に先立って行われたアンケート「短編アニメーション120周年(1906-2026)」をもとにした上映プログラムです。

アンケートでは、環太平洋やアジア圏で活躍するアニメーション作家・関係者の方々に、「120年におよぶ短編アニメーションの歴史のなかで、お気に入りの12本」を挙げてもらいました。本プログラムでは、その回答から見えてきた、現代の作り手たちに大きな影響を与えた世界各国の名作を厳選して上映します。(キュレーター:土居伸彰)

SCREENING


©1999 National Film Board of Canada
ある一日のはじまり
ウェンディ・ティルビー/アマンダ・フォービス
カナダ
1999
9分39秒

見知らぬ男の不慮の死を目撃したルビーは、街の中に自分の存在を確かめられる何かを求めはじめる。そして彼女は、思いもよらない場所でその感覚に出会っていく。 『When the Day Breaks』は、巧みなユーモアと繊細に描き込まれたディテールを通して、都市に暮らす人々の見えないつながりを浮かび上がらせると同時に、新しい一日がもたらす希望と、その儚さを静かに映し出す作品である。 共同監督のウェンディ・ティルビーとアマンダ・フォービスは、複写したイメージに鉛筆や絵具を重ねる独自の手法によって、石版画や古いニュース映画のような揺らめく質感を生み出している。 レモンやトースター、街角での偶然のすれ違い――そんなありふれた日常の断片ひとつひとつに、本作は鮮烈な存在感と感情の重みを与えている。 言葉を用いずに描かれるアニメーション作品。

ウェンディ・ティルビー

ウェンディ・ティルビーの初監督作『Strings』(1991)は、アカデミー賞®にノミネートされたほか、数多くの国際的な賞を受賞した。続く作品ではアマンダ・フォービスと共同監督を務め、『When the Day Breaks』(1999)を制作。同作はカンヌ国際映画祭短編パルムドール賞をはじめ、アカデミー賞®ノミネート、アヌシー、ザグレブ、広島の各国際アニメーション映画祭でグランプリを受賞した。2011年には続いて『Wild Life』を発表し、多数の賞を獲得するとともに、再びアカデミー賞®にノミネートされた。近年、二人はNFB(カナダ国立映画制作庁)で3作目となる短編『The Flying Sailor』(2022)を完成させた。

アマンダ・フォービス

アマンダ・フォービスは1990年、教育映画『The Reluctant Deckhand』のアニメーション監督としてカナダ国立映画制作庁(NFB)に参加した。1995年、ウェンディ・ティルビーに招かれてモントリオールへ移り、『When the Day Breaks』(1999)の共同監督を務める。同作はカンヌ国際映画祭短編パルムドール賞、アカデミー賞®ノミネート、さらにアヌシー、ザグレブ、広島の各国際アニメーション映画祭グランプリなど、多くの栄誉に輝いた。2011年には続いて『Wild Life』を制作し、多数の賞を受賞するとともに、再びアカデミー賞®にノミネートされた。近年、二人はNFBで3作目となる短編『The Flying Sailor』(2022)を完成させている。


©Bitter Films
リジェクテッド
ドン・ハーツフェルト
アメリカ合衆国
2000
9分18秒

アニメーターであるドン・ハーツフェルトのもとに届いた、テレビ局からのCM制作依頼。しかし、完成した作品はあまりにも不条理で過激すぎたため、すべて放送拒否(Rejected)の烙印を押されてしまう。本作は、そんな「日の目を見ることのなかったボツCM」の数々を繋ぎ合わせた架空の短編集である。コミカルな広告のパロディとして幕を開けた映像は、やがて現実の枠組みを無視して暴走し、アニメーションという媒体そのものの崩壊へと突き進んでいく。商業主義への痛烈な皮肉と、唯一無二の実験精神が融合した、短編アニメーションの金字塔。

ドン・ハーツフェルト

ドン・ハーツフェルト監督は2度のアカデミー賞ノミネート歴を持つ(『It's Such a Beautiful Day』、『World of Tomorrow』シリーズ、『ME』、『The Meaning of Life』、『On Memory』、『Billy's Balloon』、『Rejected』など)。作品は世界中で上映され、数百もの賞を受賞しており、2014年には『ザ・シンプソンズ』に特別出演を果たした。

ミルク
イーゴリ・コヴァリョフ
ロシア、アメリカ合衆国
2005
15分17秒

舞台は、おそらくヨーロッパのどこかにある、小さく静かな町。交通量も少なく、家々が穏やかに並ぶ、どこか親密な空気を持った場所だ。 ある家族がバルコニーにいる。祖母、祖父、母、父、そして息子。 この映画は、そんな一家の「ある一日」を切り取った物語として描かれる。 一日――しかし濃密で、張り詰めた一日。まるで人生そのものを凝縮したような時間。時間の飛躍や内省を交えた、単純ではない語りによって綴られていく。 毎朝、ミルク配達の少女が家の前にボトルを置いていく。彼女は母親とほんの一瞬視線を交わすと、すぐに立ち去る。そのやりとりには、何か秘密めいたものが漂っている。 やがて観客は、行間を読むようにして、父親がこの若い女性と密かに関係を持っていることを知る。そして息子にもまた秘密がある。彼はこの少女に恋をしているのだ。八歳の少年らしい、激しさと痛みを伴う恋に。 だが、それは本当に秘密なのだろうか。 年長者たちはすべてを見抜いている。嘘の向こう側を見通し、真実を理解している。そして最後には、母親自身もまた、その事実を知っていたことを明かす。しかしその頃には、ミルク配達の少女は、美しいバイク乗りの青年とともに町を去ってしまっている。 ラストシーン。食卓には一本のミルク瓶。窓の外では雨が雪へと変わり、一日が終わろうとしている――あるいは、誰かの人生もまた。 観客は、恋を知り、家族の死と向き合っていく少年を見つめることになる。映画は、遠回しで繊細なディテールの網の目を通して、人間関係の生々しい感触や、「生きる」ということそのものに宿る緊張感を捉えようとしている。

イーゴリ・コヴァリョフ

イーゴリ・コヴァリョフは、国際的に高く評価されている映画作家、デザイナー、アニメーター、そして監督である。彼の短編作品『Andrei Svislotski』『Hen, His Wife』『Bird in the Window』『Flying Nansen』『Milch』などは、アニメーションおよび映画界において数多くの賞と称賛を受けている。 ウクライナのキエフに生まれたコヴァリョフは、モスクワの伝説的なアニメーションスタジオ「パイロット(Pilot)」の共同創設者である。このスタジオには、現在クラスキー・チュポ(Klasky Csupo)で活躍する多くのデザイナーやアニメーターを含む、ロシア屈指の優れたアーティストたちが所属していた。 1991年、コヴァリョフはハリウッドのクラスキー・チュポ・スタジオからの招待を受け渡米。同スタジオでは、長編第1作『The Rugrats Movie』の共同監督を務めたほか、テレビシリーズ『Aaahh!!! Real Monsters』の監督や、『Duckman』『Rugrats』のエピソード、CM、インターネット短編作品などを手がけた。

旋律の遊技
ジョルジュ・シュヴィッツゲーベル
スイス
2006
3分20秒

セルゲイ・プロコフィエフ「ピアノ協奏曲第2番」のスケルツォの速いリズムに合わせて、作られては壊れていく視覚と音楽のゲーム。

ジョルジュ・シュヴィッツゲーベル

アニメーション監督・プロデューサーのジョルジュ・シュヴィツゲーベル(1944年生)は、きわめて独創的な作品を生み出している。その作品は常に卓越した技術に支えられ、物語への遊び心あふれるアプローチ、華麗な形式美、そして映像と音楽の融合が特徴。デビュー作『イカロスの飛翔』(1974年)を皮切りに、これまでに22本の作品を発表し、それらはカンヌ、ベルリン、シカゴ、ロカルノ、広島、シュトゥットガルト、オタワなどの権威ある国際映画祭で数多くの賞を受賞。『破滅への歩み』(1992年)は、史上最高のアニメーション作品のひとつとしてたびたび言及されている。2017年のアヌシー国際アニメーション映画祭では、名誉クリスタル賞を授与された。2018年、スイス映画賞名誉賞を受賞し米国映画芸術アカデミー会員となる。2019年、フランス芸術文化勲章オフィシエを叙勲。2020年、アニマフェスト・ザグレブにて生涯功労賞を受賞。2022年、『ダーウィンの手記』でHASグランプリを受賞。

おねがいなにかいって
デヴィッド・オライリー
ドイツ
2008
11分00秒

猫とネズミのあいだの、問題を抱えた関係。

デヴィッド・オライリー

デヴィッド・オライリーは、ニューヨーク州北部を拠点に活動するアイルランド出身のアニメーター/映画監督である。短編作品『Please Say Something』(2009)はベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞し、同賞を受賞した初のアニメーション作品となった。続く『The External World』(2011)はサンダンスやヴェネツィアを含む40以上の賞を受賞した。2012年にはカートゥーン ネットワーク史上初のゲストディレクターとなり、『アドベンチャー・タイム』のスペシャル回を監督。スパイク・ジョーンズ監督作『her/世界でひとつの彼女』では架空のビデオゲームのデザインを手がけた。また、シミュレーションゲーム『Mountain』(2014)および『Everything』(2017)を制作し、『Everything』はアルス・エレクトロニカでゴールデン・ニカ賞を受賞した。360度ドーム映像作品『Eye of the Dream』(2018–2023)は、金沢21世紀美術館で展示された。

アスティグマティスモ
ニコライ・トゥロシンスキィ
スペイン
2013
4分01秒

眼鏡を失くしてしまった少年は、一度にひとつのものしかはっきりと見ることができない。彼の視線は、周囲にあふれる音の方へと引き寄せられていく。やがて彼は、ぼやけた未知の場所や奇妙な人物たちが広がる世界を探検していくことになる。

ニコライ・トゥロシンスキィ

1985年モスクワ生まれ。ニコライ・トロシンスキーはマドリードでイラストレーションを学び、その後イタリアでヨゼフ・ヴィルコンおよびリンダ・ヴォルフスグルーバーの集中講座を受講した。2009年にはフランスのアニメーション映画学校「ラ・プドリエール」を卒業。2006年よりフリーランスのイラストレーターとして活動している。2010年からは実験的なビデオゲームの制作を開始し、作品『Loop Raccord』は数多くの国際映画祭や展覧会で上映・展示された。2013年には短編映画『Astigmatismo』を発表し、サンダンス、アヌシー、シッチェスなど100以上の国際映画祭で上映され、複数の賞を受賞した。2022年にはスタジオ「Nerial」との共同制作によるビデオゲーム『Card Shark』をリリース。2023年からは電子音楽と映像を組み合わせたライブパフォーマンスの制作にも取り組んでいる。またこの間、ワークショップや講義を行い、イラストレーションおよびアニメーションの教育にも携わっている。

アグリー
ニキータ・ディアクル
ドイツ
2017
11分55秒

醜い猫が、断片化され壊れた世界の中で生きようともがきながら、やがて神秘的な導き手のもとで心の伴侶を見つける。インターネット上の物語「Ugly the Cat」に着想を得た作品。

ニキータ・ディアクル

ニキータ・ディアクルはロシア生まれで、現在はドイツを拠点に活動する映画作家である。ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでアニメーションを学び、在学中に制作した『Fly on the Window』はザグレブ、アヌシー、エディンバラなどの国際映画祭で上映された。 現在はインターネット上のストーリーに影響を受け、コンピューター・シミュレーションの手法を用いた短編作品の制作を行っている。

ブロアイ通り11
ニンケ・ドゥーツ
オランダ
2018
9分39秒

切っても切り離せない親友同士のふたりが、子ども時代最後の夏休みを家の中で楽しく過ごしている。やがて夏が進むにつれ、ふたりの身体は変化しはじめ、その関係にもぎこちなさが生まれていく。思春期が、二人の絆を断ち切ろうとしているかのようだった。

ニンケ・ドゥーツ

ニンケ・ドゥーツはオランダ出身の映画監督/アーティストで、現在はオランダのロッテルダムを拠点に活動している。2010年にマーストリヒトの美術アカデミーでファインアートの学士課程を修了後、ベルギーのヘントに移り、KASK(王立芸術アカデミー)でアニメーション映画の修士号を取得した。卒業制作『1,2,3, piano!』はフランダース視聴覚基金よりワイルドカードを授与され、彼女の作品はヨーロッパ各地の映画祭や美術館で上映・展示されている。

アシッド・レイン
トマシュ・ポパクル
ポーランド
2019
26分21秒

東ヨーロッパのどこか。若い女性ヤングは、閉塞感に満ちた故郷を飛び出し、ヒッチハイクの旅に出る。しかし、真夜中の街外れに取り残された彼女は、橋の上で危うくガードレールに立つ風変わりな青年スキニーと出会う。キャンピングカーで暮らしながらグレーな仕事を請け負うスキニーとともに、ヤングは行き先のない旅を続ける。やがてその道中で、ふたりの間には不思議な親密さが育まれていく。

トマシュ・ポパクル

アニメーション監督、ミュージシャン、グラフィックデザイナー、ミュージックビデオ作家。 ウッチ映画大学でアニメーション演出および特殊効果を学び、在学中には脚本コースでも1年間研鑽を積む。 卒業制作『Ziegenort』は世界各地の映画祭で高く評価され、ヴロツワフのニューホライズンズ映画祭アニメーション部門グランプリ、クラクフ映画祭最優秀アニメーション賞、オーバーハウゼン国際短編映画祭グランプリ、ブルックリン映画祭最優秀アニメーション賞など、数々の賞を受賞した。

ステーキハウス
シュペラ・チャデシュ
スロベニア
2021
9分30秒

ステーキはここ数日、漬け込まれている。フライパンはすでに温められ、フランクの腹は鳴っている。だが、リザは同僚たちから誕生日パーティーのサプライズを受ける。彼女は時間通りに家に帰ってくるのだろうか?

シュペラ・チャデシュ

シュペラ・チャデジュは、2008年よりインディペンデントアニメーションの監督およびプロデューサーとして活動している。主に手作業によるアナログの伝統的アニメーションに関心を持ち、彼女の作品は世界中で100以上の賞を受賞している。 短編パペットアニメーション『BOLES』(2013)は、ライプツィヒ・ドキュメンタリー映画祭(DOK Leipzig)でグランプリ、バリャドリッド映画祭でゴールデン・スパイク賞を受賞し、カートゥーン・ドール賞にもノミネートされた。また、多層セル(マルチプレーン)による切り絵アニメーション『NIGHTHAWK』(2016)は、オランダ・アニメーション映画祭(HAFF)やザグレブ国際アニメーション映画祭などで主要賞を受賞し、クレルモン=フェラン、アヌシー、サンダンスといった映画祭でも上映された。 シュペラ・チャデジュは、アメリカ映画芸術科学アカデミーの会員でもある。